ギャラリー
第64回 太玄会書展 (令和5年開催)
役員作品
常任顧問
福田 丞洲
【題名】夏目漱石詩
【訓読】秋露南礀に下り黄花粲として顔を照らす/行かんと欲す礀に沿ふて遠きに却って/雲と与に還るを得たり
【解釈】秋の露が南の谷に下り、菊の花が輝いて顔を照らす/行かんとするけれど、谷は遠くかえって/雲を見て還える
【コメント】夏目漱石の詩を続けている。日本人の詩を書きたいと思っている。
常任顧問
笠原 聖雲
【題名】近作治印
常任顧問
垣内 楊石
【題名】如是
【訓読】如是(にょぜ)
【解釈】かくの如く、このように、またその通りであると認めること(あるがままの姿)
※わかりやすく言えば(当たり前である)ということ
【コメント】心の中の我を捨て、執着から解放された書を書きたいと思っている。
常任顧問
石川 流芳
【題名】續古
【訓読】景龍太極に臨み/五鳳庭に当って舞ふ/誰か信ぜん壁間の梭/天に升って雲雨と作るを
【コメント】今の自分を素直に表現したかったのだが…。
会長・理事
西村 東軒
【題名】臨風復整冠
【訓読】風に臨んで復(ま)た冠(かんむり)を整う
【解釈】向かい風に対して冠を正して仕官先へ向かう。
【コメント】楚簡を念頭に置き肉筆の持つ動きや内在する感情と前向きで力強い筆致を意識し筆を執った。
副会長・理事
蕗野雅宣
【題名】三字句
【訓読】籠鵞去(かごのがちょうさる)
【解釈】三尺×十尺の紙面の中へ文字組の妙味と書線の躍動を意識。
【コメント】陶酔と抑制のバランス如何に。
副会長・理事
宮負 丁香
【題名】盤遊
【訓読】盤遊(ばんゆう)
【解釈】楽しみ遊ぶ
【コメント】大字を書いてみたいと思いました。
副会長・理事
金丸 鬼山
【題名】圖眞不悟(書譜之語句)
【訓読】真(しん)を図(ず)して悟(さと)らず
【解釈】楷書の真髄を悟りえないこと。
【コメント】楷書作品のむずかしさを常に痛感して居る。
董事
鈴木 暎華
【題名】述懐 伊藤仁斎
【訓読】秋容淡々荒坡に傍う。薄暮人の酒を載せて過ぐる無し。簫索一叢真の活計。淵明籬下多きを須いず。
【解釈】秋の淡々とした景色の中、物さびしい堤を薄暮酒を乗せて人が過ぎて行く。
【コメント】この詩は菊に託して陶淵明の心境を詠じたもの、人生の一場面、心境の変化があらわれています。
董事
瀧沢 曲峰
【題名】碧巌録語句
【訓読】白雲深キ處(ところ)金龍(きんりゅう)躍ル碧波(へきは)心裏(しんり)玉兎(ぎょくと)驚ク
【解釈】金龍=太陽の別名/玉兎=月に兎が棲むという伝説によった月の異名/碧波=青い波/心裏=心のうち
【コメント】寄せては返す大海の波に天上の月一輪が輝いて、美しく月影を映している。海なし県の長野に住む者にとってあこがれの情景
董事
小原 天簫
【題名】後赤壁賦
【訓読】復游於赤壁之下江流有聲
【解釈】復た赤壁の下に游ぶ 江流聲あり
【コメント】「今回は三尺×十尺の用紙以内(タテ)」とありましたので、太玄会書展では前回の続きを書かせて頂きました。
董事
伊東 玲翠
【題名】世説新語 言語第一
【訓読】客の陳李方に問ふもの有り。足下の家君太丘は、何の功德有りて、天下の重名を荷ふや、と。 …以下略
【解釈】或人が陳李方に、「貴方のお父さんの太丘氏はどんな功績や徳行があって天下の名声を担っているのですか」と尋ねた事に対しての返答。
【コメント】唐時代に作られた虚実を取り混ぜた文章の「世説新語」は、後の明時代の「清言集」とも相容れて流行したようである。この文章を楽しみ、たっぷり目の墨量にて衒いのない書法を心掛けた。
董事
高橋 心行
【題名】王安石詩
【訓読】荷葉初めて開き 筍漸く抽んづ 東坡 南蕩正に游ぶに堪ゆ 端なく隴上 翛翛の麥 橫起の寒風 作秋を占む 竹裏の編茅 石根に倚り 竹莖の疏處 前村を見る 間眠す 盡日 人到るなく 自ら 春風ありて埽門を爲す…以下略
【解釈】
【コメント】馬王堆帛書の隷書部をイメージして制作したが…。
理事長・理事
伊場 英白
【題名】実朝のうた(金槐和歌集より)
【訓読】早蕨の萌え出づる春になりぬれば/野邊の霞もたなびきにけり
【解釈】春のうた・早蕨
【コメント】源実朝のうたを雅味深い線質で表現したかった。
副理事長・理事
小出 聖州
【題名】盧僎詩
【訓読】国を去って三巴遠し 楼登れば萬里春なり/心を傷ましむ江上の客 是れ故郷の人ならず
【解釈】故郷を離れて遠く三巴の地まで来た。高楼に登ってみると見渡すかぎり春の景色。それにつけても私の胸は痛むばかり。行き交ふ旅人たちは一人として故郷の人ではないのだから。
【コメント】六尺四方の紙面に果敢にチャレンジしては跳ね返されること幾度か。書は格闘技と改めて思った次第。
副理事長・理事
飛田 冲曠
【題名】老樹
【訓読】老樹に昏鴉集まり/寒塘に落雁遅し
【解釈】冬の野景
【コメント】久方ぶりの大字の感触。作品の良否はともかくとして、心境を高めるようにつとめてみた。
事務局長・理事
下谷 蘓雪
【題名】汪葊詩
【訓読】楊子橋頭夜船を泊し 水波纔かに定まって月初めて円かなり
眠らず細かに数う経行の日 笑って東風を隔つ又一年
遡流西望渺として煙の如く 黄帽斉しく将いる百尺の牽
日暮雨来って風浪悪しき 河を隔てて鼓を撾って官船に換う…以下略
【コメント】
白部分の出し方で風通しの良い作品を心掛けたが、いつもの癖が出てしまった。これからの課題となりました。
副事務局長・理事
江原 見山
【題名】臨 崔敬邕墓誌銘
【訓読】栄光は武(あと)を継ぎ邁徳(まいとく)は輝きを伝える
【解釈】栄光は跡を踏みつぎ すぐれた徳は輝きを伝える
【コメント】臨書作品ですが、原本はあくまでモチーフです。原本のムードを大切にしつつも字形の工夫に捉われすぎ、余白の処理に齟齬をきたしました。
副事務局長
大場 大幹
【題名】村夜
【訓読】旅舎灯猶在り 村人語ること漸く稀なり
山は寒月兼静かに 葉は暗霜を帯びて飛ぶ …以下略
【解釈】旅館の灯火はまだついているが、村人たちの話し声はしだいに少なくなってきた。寒々とした月が山にかかってひっそりと静まり、霜を帯びた木の葉が舞い落ちる。 …以下略
【コメント】字々の大小の変化、緩急を加えて動きのある作品を目指した。
副事務局長・理事
伊藤 慈恩
【題名】甘露法雨
【訓読】甘露の法雨
【解釈】仏様の教えが多くの人々の苦悩を取り除き救う様子を、乾いた大地を潤す雨に例えた言葉
【コメント】方形の作品のため、単調にならぬよう四字の大きさ、配置、余白に気を配りながら制作した。
理事
海野 十方
【題名】同揆詩
【訓読】絶壑松杉合し 懸巌雨を冒して登る
雲中人麦を種え 天際我藤を攀ず …以下略
【解釈】険しい谷あいに松や杉が茂り、雨の中、高く切り立った絶壁を登ってゆく。雲深いところで麦を植えている人がおり、自分は藤をつたって高い峰に登る。 …以下略
【コメント】2尺×8尺の連幅としました。隷書作品のため、一字一字に重厚さを出張し存在感と生命感のある作品としました。抑揚の効いた線質に苦慮しました。
理事
垣内 蘭畦
【題名】題画
【訓読】紫陌の紅塵馬頭を没し 人来たり人去って幾時か休す
誰か家か酒有り身事無し 長く青山に対して楼を下らず
【解釈】都の道路は人の往来が絶えず、塵ぼこりが立って馬が見えないほどである。特に用事もないので料亭の楼に登り、酒を飲みながらいつまでも青山を眺めている。
【コメント】肥痩の筆致による独自の書を心掛けていきたい。