ギャラリー

第65回記念太玄会書展 (令和6年開催)

役員作品

福田 丞洲 「夏目漱石詩」

常任顧問

福田 丞洲

【題名】夏目漱石詩

【訓読】道うことなけん/当軒野趣新なり/竹深くして鶯の乱れ囀り/清昼臥して春を聴く

【解釈】上記の通り

【コメント】夏目漱石の詩を続けている。

笠原 聖雲 「治印 四種」

常任顧問

笠原 聖雲

【題名】治印 四種
【訓読】還歸其樸(韓非子)/樸散為器(老子)/飲福(書経)/擧賢使能(礼記)

垣内 楊石 「玄風」

常任顧問

垣内 楊石

【題名】玄風

【訓読】げんぷう

【解釈】奥深い様子、姿のこと。

【コメント】題名にふさわしい書を求めてみた。

石川 流芳 「春雪」

常任顧問

石川 流芳

【題名】春雪

【訓読】春雪空に満ち来り/触るる処是れ花開く/知らず園裏の樹/若箇か是れ真梅なる

【コメント】若かったころの故郷での厳しい冬から、春を待つ心情を表現しようと思ったのだが、どうだろうか?

西村 東軒 「氷壺無影像」

会長・理事

西村 東軒

【題名】氷壺無影像

【訓読】氷壺に影像なし

【解釈】すきとおって影がない。 心中に一点の暗影がないこと。

【コメント】中国春秋戦国時代、楚の国の文字を用いた。
日常の鬱積した思いを開放し、題材の心境に近づきたいと筆を執った次第。

蕗野雅宣 「内藤鳴雪の句」

副会長・理事

蕗野雅宣

【題名】内藤鳴雪の句

【訓読】七轉八起のそれも花の春

【解釈】三尺×十尺の紙面の中へ文字組の妙味と書線の躍動を意識。

【コメント】四尺×十尺の紙面への展開、気宇壮大にして大胆に取り組む思いの中での書作。
文字の大小、墨の潤渇など、多彩さと余白美を求めてみましたが…。

宮負 丁香 「飛來福」

副会長・理事

宮負 丁香

【題名】飛來福

【訓読】飛来の福

【解釈】思いがけない幸福。『易林』に「飛來之福、入我居室」(飛来の福、我が居室に入る)からきた言葉。居室は部屋。

【コメント】4尺×10尺の用紙に入る題材を決めるのが大変でした。
書きにくい紙の大きさでどのように見えるか心配です。

金丸 鬼山 「神怡務閑(書譜の語句)」

副会長・理事

金丸 鬼山

【題名】神怡務閑(書譜の語句)

【訓読】神は怡び 務めは閑なり

【解釈】精神が安定し楽しく心地よいこと。仕事が暇で煩わされるものがない。
よい書体を生む「五合」の第一の条件。

【コメント】書譜で言う「五合」の条件が揃う事はむずかしい。
頼りになるのは自身、思い巡らして居た草稿を基に無心に書作。
如何に…。

鈴木 暎華 「窓霧」

董事

鈴木 暎華

【題名】窓霧
【訓読】窓霧冷文書静

瀧沢 曲峰 「荘子大宗師篇より」

董事

瀧沢 曲峰

【題名】荘子大宗師篇より

【訓読】古ノ真人ハ 其ノ寝ヌルヤ夢ミズ 其ノ覚ムルヤ夢無シ/其ノ食ラフヤ甘シトセズ 其ノ息スルヤ深深タリ/真人ノ息ハ踵ヲ以テシ 衆人ノ息ハ喉ヲ以テス

【解釈】真人は、眠っても夢をみることはなく、覚めた時でも憂いを抱かない。/ 味覚に心を奪われることもなく、深々と呼吸をする。/ 真人は、かかとの底から呼吸をするが、世の俗人は、のどで呼吸をするのだ。

【コメント】満八十七歳になり祝儀袋の在庫が減らず香典袋が不足する。
真人の一部でも身につけたいと思っている。

小原 天簫 「龍」

董事

小原 天簫

【題名】龍

伊東 玲翠 「世説新語 政事第三」

董事

伊東 玲翠

【題名】世説新語 政事第三

【訓読】陶公、性檢厲にして、事に勤む。荆州と作りし時、船官に敕して悉く鋸木屑を錄せしめ、多少を限らず。咸此の意を解せず。後、正會に値〻積雪始めて晴れ、聴事の前除、雪後猶ほ濕ふ。…以下略

【解釈】陶公は倹約家で仕事熱心な人物で、此の文章は荊州勅史の任に在った時の出来事を述べたもので、おが屑を集めさせて雪の後始末をさせたり、その他様々の工夫をして物に当たる様子や、大雪の降ったことに依る出来事等を記したものである。又頓智のある者を特進させたりもしたと言う事が記述されている。

【コメント】指定の用紙が3尺×10尺と初めてのサイズだったが、此の処課題にしている「世説新語」を自身としてはタップリ目の墨量で制作したのだが…。

髙橋 心行 「陸游詩二首」

董事

橋 心行

【題名】陸游詩二首

【訓読】嘉穀は焚くが如く 稗草は靑し 沈憂 耿耿 生を忘れんと欲す/新に 場を築く 鏡面の如く平かに 家家歡喜して 秋成を賀す/老來 嬾惰丁壯に慚じ 美睡中に聞く 打稻の聲

【解釈】

【コメント】帛書、木簡等の肉筆資料の筆法を加味して書いてみたが…。

伊場 英白 「菜根譚」

理事長・理事

伊場 英白

【題名】菜根譚

【訓読】天地には萬古あるも此の身は再び得られず/人生は只だ百年のみ此の日最も過ぎ易し

【解釈】天地は千秋萬古永遠に存在するが、この身は二度と生まれては来ない。/しかも人生はたゞ百年にすぎないのに月日のたつのは甚だしく早い。

【コメント】日々楽しく有意義なものにしたいですね。

小出 聖州 「李商隠詩」

副理事長・理事

小出 聖州

【題名】李商隠詩

【訓読】春に動く 何限の葉 暁に撼く 幾多の枝/解く相思有りや否や 応に舞わざる時無かるべし…以下略

【解釈】春の暖かい風はいつまでも柳の葉を揺らし、暁には多数の垂れた枝をも揺さぶる。柳も恋をするのだろうか。風のそよぐ限り、枝葉の舞は止みそうもない。…以下略

【コメント】コロナ禍の中で筆を持つことに何か意味が有りましたか。書を書き続ければ、地球の温暖化を食い止められますか。二酸化炭素排出にストップがかけられますか。政治家不信による投票率の低下に一石を投じられますか。そう問われ続けても私には何も出来ません。ただ、筆を執り続けることだけは出来ます。

飛田 冲曠 「韋応物詩」

副理事長・理事

飛田 冲曠

【題名】韋応物詩

【訓読】山高く過雨鳴り 澗樹残花落つ/ 春の待たざるに関するに非ざるも/当に由るべきの期自ら賖かなるに

【解釈】山は高く 雨は去り 小川の木々は花を残して倒れてます/春が来るまで待たないでください/ 期限内の自己契約をしてください

【コメント】久方ぶりの大字の感触。作品の良否はともかくとして、心境を高めるようにつとめてみた。紙の醸し出す感覚の滲みの力を借り、大筆と息を合わせて書いてみました。

下谷 蘓雪 「王漁洋詩」

事務局長・理事

下谷 蘓雪 

【題名】王漁洋詩

【訓読】斜日橈を停めて喚ぶこと奈何 横塘肥声散ず采蓮の歌/青山古道閶闔に通じ 緑黛春風苧蘿を憶う/廃苑愔愔花暮れんと欲し 長洲淼淼水空しく波だつ/千金枉げて鋳る鴟夷の像 鳥自ら高く飛んで網羅を避く

【コメント】少し大きく、太い文字を書いてみました。
変化等を考えるより56字を入れるのに労力を使ってしまいました。
黒く、明るくを意識しました。

江原 見山 「曹孟徳詩句」

副事務局長・理事

江原 見山

【題名】曹孟徳詩句

【訓読】我に嘉賓有らば/瑟を鼓し/笙を吹かん

【解釈】立派な客人たちとともに、大琴をかき鳴らし笛を吹いて楽しみたいと思う。

【コメント】北魏の楷書をベースとし、凜乎たる作品を目指しましたが…。

大場 大幹 「禹廟」

副事務局長

大場 大幹

【題名】禹廟

【訓読】禹廟 空山の裏 秋風 落日斜めなり/荒庭 橘柚垂れ 古屋 竜蛇を画く/雲気 虚壁に生じ 江声 白沙に走る/早く四載に乗るを知り 疏鑿して三巴より控く

【解釈】旅館の灯火はまだついているが、村人たちの話し声はしだいに少なくなってきた。寒々とした月が山にかかってひっそりと静まり、霜を帯びた木の葉が舞い落ちる。 …以下略

【コメント】墨量多めにし、字々に大小の変化を入れ抑揚を利かせて、平板にならない様に心がけて筆をとる。

伊藤 慈恩 「王士禎詩句」

副事務局長・理事

伊藤 慈恩

【題名】王士禎詩句

【訓読】寒雨 秦郵 夜船を泊す/南湖 新たに漲って 水天に連なる

【解釈】冷たい雨が降る中、高郵の岸に船を止め夜を過ごした。/南の湖は雨で水が満々とたたえられ、まるで空とつながっているように見える。

【コメント】行草体で躍動的に表現したかった。

海野 十方 「李太白詩」

理事

海野 十方

【題名】李太白詩

【訓読】雨後 𤇆景綠なり 晴天 餘霞を散ず/東風 春に隨って歸り 我が枝上の花を發す …以下略

【解釈】雨晴れし後、煙れる春景色は、緑に心地よく、やがて、晴れた空に残れる夕やけが散じて日も暮れて仕舞った。/東風は、春に随って帰り来り、わが庭樹の花どもを開かしめた。…以下略

【コメント】隷書としての力強さと重厚性のある作品にと、横画の水平に配慮しました。
また伸びやかな筆致も必要と思っています。

垣内 蘭畦「白楽天詩 和夢得冬日晨興」

理事

垣内 蘭畦

【題名】白楽天詩 和夢得冬日晨興

【訓読】漏は初五の點を傳へ 雞は第三聲を報ず 帳下從容として起くれば/窓間曨驄として明かなり 書を照らして燈未だ滅えず 酒を煖めて火重ねて生ず/曲を理めて絃歌動き 先づ聞く渭城唱ふるを

【解釈】水時計は五点を報じ三番鶏も鳴いた。寝床を離れて帳下に立てば、東の窓がほの白くなっている。/読書の燈はまだ消えずに残り、酒を温めるために重ねて火を起こした。/時にどこからともなく絃をはらって渭城の曲を歌う声が聞こえてきた。

【コメント】肥痩の筆致による独自の書を心掛けていきたい。